嘘!?ハガキ作りで行動障害が改善した?~OTの作戦とチーム連携の相乗効果~(2023年3月17日)

〇開催日時:3月17日(金)19時30分~21時00分
〇研修名:『嘘!?ハガキ作りで行動障害が改善した?~OTの作戦とチーム連携の相乗効果~』
〇講師:小林健哉
〇主催:ここくら委員会(埼玉県士会精神科領域の委員会)

〇概要
社会福祉法人 埼玉医療福祉会 光の家療育センターに勤務され、重症心身障害児・者を専門とする小林健哉氏を講師に招き、講義・ディスカッションを実施しました。

〇背景
本研修は、第56回日本作業療法学会最優秀演題を受賞した『問題行動の軽減につながった強度行動障害病棟の日中活動について―作業療法士の視点から―』の発表から「精神科作業療法の視点でも学べることが大いにありそうだ」「深堀して精神科でも活かしたい」という貪欲なここくら委員の思いから実現しました。

〇内容
・講義
自傷・他害行為、破壊行為、不潔行為、異食、こだわり等の強度行動障害を抱えた対象者に対して、和紙制作を手段に、それぞれの対象者にぴったりの武器・装備を提供した結果、作業遂行が円滑になり行動障害の改善にもつながったという、「うそ!?」という手品のようなアプローチ。タネも仕掛けもあるそのアプローチは、「やらない」ではなく「できない・難しい」という視点、「対象行為をやめさせる」のではなく「対象行為以上に夢中になれる活動を提供する」という発想が根底にあり、病棟職員との連携により効果的に実現された、知れば納得の再現性の高いものでありました。

・ディスカッション
ディスカッションは、『和紙制作について』『他職種連携について』『問題行動について』と3つのグループに分かれて行われました。
「作品を販売し、売り上げを還元できるのが嬉しい」「できることを探すだけではなく、できることを作るというのが良い」
「作業療法士が病棟の業務や都合を理解していることは大きい」「活動後のディスカッションによりお互いの考え方を知る機会になっている」
「OT中だけではなく、生活全般に好影響をもたらしたのはすごい」「その行為や感情の原因や傾向等を探ることで介入の糸口を見出すことができる」等の意見・感想が上がり、明日から臨床場面で活かせる話題が豊富でした。施設と対象者の特徴が合致した作業を、作業療法士の技が光る手段で提供した成果に胸を打たれるとともに、多職種連携の重要性や行動障害の捉え方を深堀する機会となりました。また、当事者の方から「回復期でもこの様な作業をやりたかった」等、当事者目線の貴重な意見をいただき、素直に耳を痛くする作業療法士も少なくなかったようでした。

・アンケート
事後アンケートでは満足度100%の研修となりました。
「患者さんの能力や特性に合わせた作業を提供しながら、継続して和紙作りを行い、問題行動が解決していく過程にすごく感銘を受けました」「作業が人を元気にすることを体現している取り組みで素敵だなと思いました」「ザッ作業療法と思いました」など、ここくら委員会らしい(作業療法らしい)研修会になりました。