作業療法士が語る作業療法

私が働く病院は、地域に根ざした医療を展開しており、高齢者や障害を抱えた方が、住みなれた地域の中でその人らしい生活ができるように支援を行っています。その中で私は、病気や障害により長期的な入院が必要となった方や人生の最期を迎えようとしている方、自宅退院に向けて支援が必要な方など、様々な方が入院している病棟で作業療法を実施しています。

今回は、私が普段どんなことを大切にしているかを交えながらお話ししたいと思います。私が働く病棟は前述したように様々な方が入院されています。その病気や障害はどちらかというと重症の方が多いです。自分では座ることも、立つことも、ご飯を食べることもできません。生活する多くのことに何等かの介助または全てに介助が必要なのです。

そこで私は、「その人らしさ」を大切にして作業療法を行っています。ですから、一番初めにすることは「その人を知る」ということです。どこで生まれ、どこで育ち、どのような生活を送り、そのような人生を歩んできたのかを知るということです。

知った情報をもとに医師、看護師、介護福祉士、理学療法士、言語聴覚士、薬剤師、栄養士、歯科衛生士など多くの職種からなるチームの一員として、できる限りその人の生活を尊重したかかわりを行っていきます。

座れるようになりたい。歩けるようなりたい。食べられるようなりたい。と言われることがあります。そこで私は、どのような椅子に座りたいか、座って何をしたか、どこへ行きたいのか、何で(箸、フォーク、スプーンなど)食べたいのか、何が食べたいのかなどを聞きます。そして私は、その為の手段を考えたり、実現に向けた練習をしたり、実践の場を作ったりとその人らしさを取り戻す支援をしていくわけです。また、病気になる前の生活に近づくような関わりの中で、以前とは同じ方法で生活することが難しい方もいます。そのような方に私は新しい方法や新しい生活を提案し、その人がその人らしく生きることが継続できるように支援しています。

「明日がわくわくして楽しみだ」と思えるように、今日という日を一緒に寄り添い、いろいろな可能性を本人、家族と一緒に考えていく。作業療法士はそんな一端を支える仕事だと思います。