地域在住の訪問リハビリテーション利用者A氏の大学での語り~地域住民×訪問看護事業所×大学のコラボレーション企画~

『リハビリの大学のオープンキャンパスに行って、学生さんの前で話がしたいとOTの教員に伝えて来たよ!』 全ては、A氏のこの一言から始まりました・・・

思い浮かべてみて下さい。今あなたが担当している患者さん・利用者さん・入所者さんの中で、発症から現在の生活までの実体験を大勢の人前で「語りたい」と自ら言え、実現させてしまう方は何人いるのでしょうか?それは平成30年11月29日(木)に埼玉県立大学内にて行われ、聴講した学生さん達にOTになることへの「責任」と『喜び』のメッセージが込められた「語り」でした。


「語り」の内容は発症時の緊迫した状況と、専門用語を用いた病状の説明から始まりました。続いて、急性期病院から回復期リハビリテーション病院を経て自宅退院するまでのリハビリ体験談を当時の心境を交えながら語られていました。「あきらめない」「残存能力を活かす方法を考える」など、A氏から名フレーズが次々に飛び出しました。特に、強く印象に残った場面は「障害受容」と「意欲を引き出すことの大切さ』に話が及んだことでした。また「語り」だけではなく、姿勢の評価や短下肢装具の着脱及び歩行のデモンストレーションもして頂きました。最後のクイズ形式?で学生さん達の笑いを取り、盛り上がっていました。まとめの部分では「これから担当する方の話をたくさん聞いてあげて下さい。」という言葉で本日の「語り」は終わりました。学生さん達からは、「今までで担当のリハビリの人から言われて傷ついた一言はありますか?」、「患者さんの意欲はどうすれば引き出せますか?」等の鋭い質問ばかりでした。

現在9、訪問リハビリテーション利用者であり地域住民のA氏は、職場復帰もされています。今回の「語り」は、担当OTの私でさえ半分は知らない内容でした。アンケート結果を拝見させて頂きましたが、A氏の自発的な行動により学生さん達ひとりひとりにA氏のメッセージは届いたはずです。「活動と参加」という言葉をよく耳にしますが、大学の講義室で「語り」をされるというこのような場面に立ち会えたことは、私にも貴重な体験でした。と同時に、作業療法の定義にもある「健康と幸福」について考えさせられるヒントを得ました。今後も、このような地域住民とOT(筆者と小池先生)との取り組みを自分の中だけに留めず、埼玉県の作業療法士の皆様と情報共有をしていきたいと思います。

最後になりましたが、学生向けに貴重な「語り」をして頂いたA氏、大学の会場を準備して頂いた小池祐士先生に心より感謝を申し上げます。

(株)ベルツ 在宅リハビリテーションセンター草加
訪問看護部 リハビリ課 作業療法士 高橋暢介

※「活動瓦版」への投稿及び画像の掲載は、A氏より使用の承諾を得ています。

<在宅リハビリテーションセンター草加OTスタッフの活動紹介>

①高橋暢介:2018年12月15日発行 雑誌「訪問リハビリテーション」特集(生活支援記録法)F-SOAIP

②三瓶政行:2019年度中発売予定 「環境適応講習会」の集大成が青海社より出版(分担執筆中)