平成29年度地域包括ケアシステム研修ナイトセミナー 「知識と技術・実践の結びつき~顔の見える関係から腕と腹の見える関係へ~」

第2回 前野隆司氏(慶應義塾大学大学院システム・マネジメント研究科委員長・教授)による「幸せのメカニズムと地域」研修報告

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今年度第2回のナイトセミナーは、前野先生のダンディなお人柄とデータを積み上げた説得力のある内容かつユーモアあふれる内容で予想以上の盛り上がりとなりました。台風の近づく悪天候にも関わらず、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士以外の医師や看護師、行政、ジャーナリストなど幅広い分野から、総勢101名の方々にご参加いただきタイトル通りの「幸せ」な2時間となりました。

今回の研修は、まさにアナロジー(違う分野からヒントを得る)であり、人として何が幸せかを根拠に基づいて理解し、納得できるものでした。

前野先生は「幸福学の第一人者」と呼ばれており、多くの著書を出版されYouTube でも、「前野隆司、幸せ」のキーワードで幸福学を語っている動画も見ることが出来ます。必見です!!では、講義のポイントをほんの少しだけご紹介します!

長続きしない幸せは、他人と比べられる財(金、モノ、社会的地位)であり、手に入れた時は幸せでも、すぐに覚めてしまう。求めても求めても満たされない幸せなのだそうです。

長続きする幸せは、WHOの健康の定義(『健康とは、完全に、身体、精神、及び社会的によい(安寧な)状態であることを意味し、単に病気ではないとか、虚弱でないということではない』)を満たし、さらに幸せに寄与する心的(精神的)要因は4つあるのだそうです。これを「幸せの4つの因子」と呼びます。

第一因子 自己実現と成長(やってみよう因子):目標を達成したり、目指すべき目標を持ち、学習・成長していること

第二因子 つながりと感謝(ありがとう因子):多様な他者とのつながりを持ち、他人に感謝する傾向、他人に親切にする傾向が強いこと

第三因子 前向きと楽観(なんとかなる因子):ポジティブ・前向きに物事を捉え、細かいことを気にしない傾向が強いこと

第四因子 独立とマイペース(あなたらしく因子):自分の考えが明確で、人の目を気にしない傾向が強いこと

4因子をまとめると、幸せな人とは、「多様な者が助け合い尊敬し合い(第2因子)、前向きかつ楽観的に(第3因子)、自分らしく(第4因子)、それぞれの夢や目的を目指し、解決していく(第1因子)」ような生き方をしている人だということができます。まさに、「総合的な生きる力」のある人材だと言えるでしょう。そして、この4つの因子から「幸せ」になるためにはどうしたらよいかは、「自分を知り、信じ、許し、敬い、愛すること」+「みんなを知り、信じ、許し、敬い、愛すること」であると話されていました。

第2因子の多様な他者とのつながりについては、ブラインドサッカー協会による多様性適応力評価尺度の研究を示してくださいました。障がいのあるなしに限らず、多様性に適応し、多様性を尊敬し合うことが出来る人は幸せな人なのだそうです。

また、目的を決めずに場を用意すると、人が自然に集まり、会話が弾み、いつの間にか役割を持つという、「芝の家」(港区と慶應義塾大学が共同で運営するコミュニティづくりの活動拠点)の研究についてもお話いただきました。

さらに、みんなもともと何かの達人。例えば、地域にはピカピカの泥団子作りの達人もいれば、古墳マニアのおじいちゃんもいる。そうした達人を育成し、体験プログラムを企画することで、達人や企画したコーディネーターは幸せの4つの因子が実現し、体験した人は学びの場、出会いの場を得ることが出来るというまちづくりプロデュース(NPO法人吉備野工房ちみち 加藤せいこ氏)のお話は、作業療法士の心がググッとえぐられるものでした。

いずれの取り組みもぜひホームページで検索してみてください。きっと新しい発見があるはずです。

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そして、最後に研修に参加してくださった作業療法士であり、今はヨガの先生でもある小沢真奈美さんが、前野先生とコラボした「幸せの4つのヨガのポーズ」を飛び入りで披露してくださいました。まさにアナロジーな時間でした。

このような内容であっという間に80分の講義は終わり。まだまだ聞きたいことだらけ・・・の研修となりました。多職種で知見拡大のための講義を聴くって、本当に幸せな時間だとつくづく感じた2時間でした。

報告者:地域包括ケア推進部長 茂木有希子